双極性感情障害
双極性感情障害とは
双極性感情障害は躁うつ病とも呼ばれ、気分が高揚して活動的なそう状態と、憂うつで無気力な状態を繰り返す気分障害です。
気分が高揚し、睡眠時間が少なくても調子が良い・仕事がはかどるといった、本人も周囲の人間もそれほど困らずあまり気付かない程度の状態を「軽そう状態」といいます。
うつ状態に加え、軽そう状態が起こる双極性障害を「双極Ⅱ型障害」といい、家庭や仕事に重大な支障をきたし、入院が必要になるほどの激しい「そう状態」が1度でも見られる場合は「双極Ⅰ型障害」と呼ばれます。
ただし、双極性感情障害と似た症状でも、軽症であり具体的な診断基準を満たさない場合があります。
そのような状態では、特定不能の双極性障害または 気分循環性障害と分類されることもあります。
双極性感情障害の原因
双極性感情障害の原因については正確には分かっていませんが、通常のうつ病や他の精神の病気にくらべると、脳や遺伝子など生物学的な要因と関係する度合いが強いと考えられています。
発症の誘因としては、睡眠不足やストレス、日常生活におけるイベントなども挙げられますが、そういった外部の因子以外に各人の生物学的要因が影響していると考えられています。
また、甲状腺機能亢進症など、その他特定の病気に伴いそう症状が現れたり、コカインやアンフェタミン類などの薬物が原因や引き金になって起こる場合もあります。
双極性感情障害の症状
双極性感情障害では、症状がある時期とほとんどない時期が交互に現れます。症状がみられる期間は人によってばらつきがあり、数週間であったり3~6カ月間続く場合もあります。
そのサイクルの長さは様々で、まれにしか症状がみられない人もいれば、毎年4回以上症状がみられる人もいます。
このように大きなばらつきがありますが、それぞれの患者さんにおいては、比較的サイクルの一貫性がみられます。
症状にはうつ状態、そう状態、軽度のそう状態(軽躁状態)があり、大体の場合はそう状態とうつ状態のうち一方に優勢がみられ、各サイクルの中でそう状態とうつ状態が交互に入れ替わる人は少数です。
双極性感情障害の人は自殺率が高く、生涯全体で見た場合、そうでない人と比較して、少なくとも15倍、自殺による死亡率が高くなります。
双極性感情障害の治療
重度のうつ状態やそう状態の場合や、それほど重度ではなくとも自殺のおそれがある場合や、自分や他人を傷つける危険がある場合、アルコールや薬物などの使用による障害がある場合などに、入院治療が必要になることがあります。
基本的に軽そう病は外来で治療可能です。
双極性感情障害は治療せずに放置してしまうと、ほぼ例外なく再発します。
双極性感情障害の治療は、気分安定薬や抗精神病薬などを用いた薬物療法を基本に治療法を組み立てていきます。
また、併せてカウンセリングなど精神療法的アプローチを組み合わせることで、より効果が見込める場合もあります。
薬物療法
症状が多様な双極性感情障害は、とくに薬の使い分けが難しい疾患です。
中には血中濃度を測りながら、慎重に投与量を決める必要がある薬もあります。
正確なデータをとるためにも、処方された量と回数をきちんと守ることが大切です。
また、双極性感情障害におけるうつ状態に対して使用する薬は、通常のうつ病に対して使用する薬とは異なります。
治療してもなかなか治らないうつ病が、実は双極性感情障害だったという例もよくあるため、しっかりと経過を見定める必要があります。
精神療法
双極背感情障害は精神療法単体での治療は難しいですが、薬物療法と併せて行うことにより、治療が順調に進む場合もあります。
双極性感情障害の際に行う精神療法では、本人が自分の病気を知り、受け入れ、自ら病気をコントロールできるよう援助することが目的です。
双極性感情障害は再発性が高い病気ですが、精神療法によって自分の再発の兆しにすぐに気付き、対応することができるようになれば、再発時に早期に治療を始めることも可能です。
他に電気で頭部を刺激する精神科電気けいれん療法(ECT)や、磁気により頭部を刺激する経頭蓋磁気刺激療法(TMS)といった治療法があります。
薬物療法の効果が現れないうつ病およびそう病に対して、用いらることがあります。